「遠藤、まだかな...。」

 

 

今日は遠藤と私が付き合って1年の記念日。

 

職場の同僚である彼に突然告白された時は、少し戸惑った

 

付き合った最初の頃は、ちょっと不器用で無愛想だけど、でもすごく真面目な人だと思えた。

 

 

だけど最近、あの人の考えていることが、私にはわからない。

 

今日だって、待ち合わせの時間をもう1時間も過ぎている。

 

 

「...やっと来た」

 

駅の方に目を向けると、遠くからSupremeのダウンを着た遠藤が歩いてきた。

 

 

「はい遠藤です」

 

「遅いよ。12時に待ち合わせって言ったの遠藤じゃない...。今何時だと思ってるの?」

 

「....。」

 

「今日なんの日だか、覚えてるの?」

 

「...。」

 

 

遠藤は、重く閉ざした口をやっと開いた

 

「今回の、俺が遅刻した件について思うことは...」

 

「もういい。」

 

 

「私たち、別れましょう?」

 

 

 

「...。」

 

「どうせまた、自分は悪くないとか言うんでしょ?いつもそればっかり。私のこと、何だと思ってるの?」

 

「...。」

 

 

遠藤は、口を閉じ目線を逸らしたままだった

 

 

 

背を向けて歩き出す私を、あの人は追いかけもしない

 

 

来週7月16日は私の誕生日。

 

今年こそ、何か良いことがあるはずと期待していたのに...。

 

 

7月16日ーーーー

 

「ちょっと椎木さん。アナタ、さっき頼んだ仕事まだやってないの?」

 

「あっ、申し訳ありません!」

 

「アナタ何しに会社に来てるの?いつまで学生気分でいるのよ」

 

「申し訳ありません....」

 

「申し訳ありませんじゃないわよ。これで注意するの何回目だと思ってるの?」

 

 

 

さいきん、何だか上手くいかないことばかり。

 

常に頭がぼーっとして、会社ではミスばかりしてしまう。

 

小さい頃思い描いていた「かわいいお嫁さん」なんて将来の夢とは程遠い、だめだめな人生だ

 

 

「今日は誕生日だから、おめでとう私...」

 

帰り道。コンビニに寄り、発泡酒とナチュナルポテトをカゴに入れ、小さく呟いた

 

 

「誕生日おめでとうなんて、誰も言ってくれなかったなぁ...」

 

 

歩きながら、自宅アパートの前まで来た。電気が点いていた

 

「あれ?ちゃんと消したハズなんだけど...」

 

 

ドアを開けると、ケーキの箱を持った遠藤が立っていた

 

 

そして私を見るなり、ぎゅっと抱きしめた

 

「遠藤...。私の誕生日、覚えててくれてたの...?」

 

 

返事をせず、遠藤は口を開いた

 

「えー。今日はですね。会社の上司に怒られた人がいる件についてなんですけど」

 

 

「会社に社員っていますよね?毎日一生懸命働いて社会に貢献するっていう」

 

「でそん時に、ちょっとしたミスで上司が怒ったりする上司がいて、問題になってますね」

 

 

私を抱きしめながら、遠藤は続ける

 

 

「で今回の件で思うのは....」

 

「....」

 

 

「...お前は悪くないっすね」

 

 

 

「....」

 

 

 

 

「なんでかって言うと」

 

 

「この女はミスをしようと思ってしたわけではないんですよ」

 

「それは一生懸命だからだったんですよ」

 

「まぁどういう事かっていうと」

 

 

「いつも何事も真面目に取り組んでいて、周りに気を使い過ぎてしまうからこそ、この女は自分のことに目を向けられないんですよ」

 

「でもそれだと、小さなミスをしてしまう事もある」

 

「じゃあそれを防ぐにはどうしたらいいか?」

 

 

「...結婚するしかないですよね」

 

「ていう事で、名字が遠藤になるお前は悪くないっていう事が言えますよね。はい」

 

 

「遠藤...」

 

 

遠藤里佳として、2人で前を向いて生きていく。そんな人生も、きっと悪くなさそうだ。

 

 

〜fin〜

コメント一覧
  1. 匿名 より:

    脳内再生余裕なのが悔しい
    面白かったです

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